第八章

渋谷109。私、帽子屋は、そこに店を構えていた。

 

あのいまいましい女王が、ティラミスになり、

働き者だったうさぎの少年がハトサブレにされ、

お菓子の建造物をすべてを建設していた魔女が、

通りすがりの女の子にお菓子にされて食べられた。

 

もうあの国は終わりだろう。

そう見切りをつけた私、帽子屋は、思い切って外に店を出してみたというわけだ。

この圧倒的センスと、人を見る目で、次々と有名人のご指名帽子屋となり、

渋谷では、今ではちょっとした人気者である。

 

さて、私帽子屋が、紅茶を片手に、こんな話をするのは、

何やら店に来た金髪の少女が、目を輝かせながら質問してくるからだ。

私はいろいろ話して聞かせてやった。今はなくなったお菓子の国の物語を。

 

お菓子の魔法の杖は、物語と共に、その少女に渡した。

国はもう滅びたし、滅ぼした少女は記憶にすらないだろう。

 

私は思う。どんな世界も、必ず終わりが来る。

それは取るに足らない理由なのか、偶然招かれた少女なのか、

とにかく終わりは来る。

では、そこにあったものはなくなってしまうのか。

そんなことはない。誰かが物語りを紡ぐ限り、

消してなくなったりはしない。

 

いつしか、歪で、不完全な、だけど素敵なお菓子の国は、

今日、あなたが降りるマンションのエレベーターの

あるはずのないB1のボタンを押したら、

現れるのかもしれない。

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おわり