home > 小説 > 3章「煉獄の王国魔女ナルシア」 > 3.18 煉獄の魔術と王国
そうね、どこから話そうかしら。内容は結構あなたにはショックなものかもしれないけど、
怒って私に八つ当たりしたりしないでよね。
っていうか、人の魔本を勝手に読んで、本当は怒ってるのはこっちなんだからね。
どこまで知ってるのか分からないけど、まずは、「騎士王の剣」について
話した方が良いかな。
まず、水の魔法使いが転生魔法を使おうとした事は知ってるよね。
転生魔法を使うためには、肉体的には「死ぬ」必要があるのよ。
でも、水の魔法使いは蘇生魔法があるから、簡単には死ぬことが出来ない。
その時に使ったのが、「騎士王の剣」なの。
えーっとね。まず騎士王の剣が何で出来ているか説明しなきゃならないんだけど、
騎士王の剣は、「天使の羽」で出来てるのよ。
天界人と魔法使いたちが戦争を起こしたのは知ってるよね。
この原因が、この「天使の羽」なの。
簡単に言うと、この天使の羽は、魔法使いにとっては劇物で、触れただけで
アレルギー症状を起こして数日で体の組織が分解され、死んでしまう。
魔力が高ければ高いほど効果が高くて、まあ水の魔法使いレベルになれば、
致死物ね。
この騎士王の剣で、水の魔法使いは自害し、転生を図った。
ところが、転生は半分成功で、半分失敗だった。
水の魔法使いは、心の中にもう一つの闇の人格を持っていたの。
その闇の人格が転生をせずに、水の魔法使いの体に残り、それ以外の魂は転生に成功した。
そして、その闇の人格は、現世に残り続けた。この時に、天使の羽のアレルギーは
克服してしまったから、当然、騎士王の剣では魔王を倒すことは出来ない。
前置きが長くなったわね。一言で言うなら、このことを王国は知っていた。
だから、初めから魔王を倒すには、煉獄の魔術でその体ごと焼き払うしかなかったということよ。
でも、煉獄の魔術の真骨頂は「生贄」を捧げる事。捧げる生贄が、魔法使いにとって大切であれば、
あるほど、その力は大きくなる。
だから、パーティを結成させて、魔王の討伐隊を組んだ。