home > 小説 > 3章「煉獄の王国魔女ナルシア」 > 3.15 炎の神グラードイン
煉獄の魔女と呼ばれた少女、ナルシアは考える。
騎士王の剣を折られた。
これはつまり私たちに攻撃の手段がないことを意味する。
魔王には物理攻撃は聞かない。なぜなら水の魔法によって、その体は即座に再生し、回復する。
騎士王の剣で真っ二つに切られた魔王の胴体は、回復が遅いものの、完全回復までは時間の問題だろう。
魔王の能力「ダークネス」は、あくまでカウンター型で、1対複数でしか使うことが出来ない。
だからさっき1度だけ攻撃を食らった。つまり、私の攻撃魔法を防ぐ方法はないということだ。
さっき魔王には私の使える最大の攻撃魔法「ファイヤーディストラクション」を
使っても、その身を消し去ることは出来なかった。しかし、回復に時間が少しかかっていたのを
私は見逃さなかった。つまり私の攻撃魔法は効いてはいるものの、火力が足りていないということだ。
倒すのであれば、炎などの方法でこの世界から一瞬で消し去るしかない。
もし仮に「ファイヤーディストラクション」以上の攻撃魔法を使うことが出来れば。
そう、私にはまだ禁じられた魔法「生贄合成」の力が残っている。
生贄はいる。地下にいるゲノムキマイラ達を焼き尽くし、生贄にすれば、どれほどの威力の魔法を使えるか。
おそらく、なんとか魔王を倒せる。そして、ゲノムキマイラ達がいなければ、魔王は再生しない。
呼ぶしかない。禁断の魔術を使って、炎の神「グラード・イン」を。私は覚悟を決めた。