第二章 

ふと気が付くと、私は暗い洞窟の中にいた。

落ちたのは、やわらかいワラの上。頭のてっぺんが、

ちょうどワラの積んである高さに届くぐらい。

上を見上げると、遠くに丸い点が見えた。

「とても深くまで落ちたのね・・・。」

私は呟いた。

白うさぎを追いかけて飛び降りたというのは、

いささか、人に言っても信じてもらえる話ではない。

おおけがをしなくて本当によかったと、ほっとする。

誕生日を最近むかえて、ひとつ大人として認められた

私にとってはとても大切なことだ。

 

ふと、壁に手を置いた。洞窟の中は、薄暗いが、

光は差し込んでおり、歩いて外に出るには不自由はなさそうだ。

と、不思議な感触に、私は首をかしげる。土・・・だよね?

それにしては、なにかが違う。

ちょっとはしたないことだけど、と今考えると思うけど、

きっとそれは、乙女の本能なのだろう、とあとで考えると、

やはり納得する。私は、その土を・・・なめてみた。

・・・チョコレートだ。甘い。

 

異世界なのだ。と思うと不思議と納得がいった。

つまらないコンクリートのマンションの地下には、

大冒険でメルヘンで、わくわくどきどきなお菓子な国が広がっているのだ。

そうに違いない。大冒険には、まずは村人に会わなければならない。

 

薄暗い洞窟の、チョコレートの壁に沿って進むと、

光が見える。外に出ると、そこは森だった。小川が流れ、木々が生い茂り、樹海の中。

真上を見上げると。空は青く、よく晴れて、

木々の隙間から太陽が見える。木漏れ日が気持ちがいい。

 

ふと、少女は腰を落として、着慣れないワンピースに苦労しながら、

小川の水をすくって飲んでみた。サイダーだ。

立ち上がり、スカートの汚れをおざなりに払った。

心は別の方向へ、木の葉っぱを1枚取って食べてみる。グミ?

道端に落ちている小石は、キャンディーのようだった。

 

もしかして、お菓子の国?にわかには信じられない。

やはり、夢を見ているのかもしれない。

「誰か、いませんかー!!」

いきを吸い込み、大きな声で二度言った。

そして、手を後ろに組んで、得にすることもなく立っていると、

「いそがなくっちゃ、いそがなくっちゃ」

白い時計を持っている。確かに、私が追いかけて来た、白うさぎの女の子だ。

ハニー☆ラビット

「あ、待ってよ、うさぎさん。」

止まる様子はない。白うさぎは私を無視して、忙しそうに去っていった。

「待ちなさい!」

私は、少し声をあげて、追いかけた。結構あのウサギ、足が速い。

私はスカートのすそが地面の土・・・チョコレートで汚れないように、

少し持ち上げながら、走り始めた。慣れない洋服は、着るものじゃないと思った。走りにくい。

白うさぎを追いかけて行くと、「お菓子な家」と書かれた大きな家に着いた。