お茶会をしようというのに、定刻どおり席についているのは、
この私帽子屋だけだった。
私の仕立てたとんがり帽子を被っている魔女は座っていない。
どうせお菓子の家の建設して、疲れて寝過ごしてるんだろう。腹立たしい。
白ウサギも来ない。
あいつはいつも忙しそうにしてるが、一度も会議に間に合ったことがない。
女王の奴も来ない。
あいつはどうせそもそも面倒だから来る気がないに違いない。
しかし、そうなると困ったことになる。
私が真心込めて入れた、アールグレイの紅茶はどうなるのだ。
さめてしまうではないか。一人で寂しく飲めというのか。
と、なんとも偶然なことに、青い服を着た女の子が歩いてきた。
魔法のステッキを持っている。
犬だってヤギだってガチョウだって、かまわない。
私は目を輝かせて話しかけた。
「ちょっと、そこのお嬢さん」
私は急に離しかけられたので、びっくりした。
女の子だ。ちょっとボーイッシュな女の子。帽子がとってもおしゃれ。
「ちょっとそこに座りなさい。お茶会をしよう。お茶の用意もある。」
「え、ほんとう?」
そういえば、お茶はまだこの世界に来て飲んでいない。
そもそも喉が渇いた。甘いものばかりで少し飽き飽きしていたのだ。
「ちょうどいいところにきてくれた。まずはお茶をどうぞ。アールグレイだが。」
「ありがとう。」
角砂糖を2つ。ミルクも入れて、私はアールグレイを飲んだ。
「私は、帽子屋さんだ。見たところ、かわいいリボンを使っているね。君に薦められる帽子はなさそうだ。」
「ありがとうございます、帽子屋さん」
「ああ、ところで、ひとつ言い忘れていたのだが、その紅茶、いかがだったかな。」
「とてもおいしかったです。」
「それは、よく考えたら毒薬入りだった。女王をお茶会で毒殺する予定だったんだ。すっかり忘れていた。すまないね。」
!!え?
「2時間程度で、効果が現れると思うぞ。この世のものとは思えぬ腹痛に襲われ、倒れる。」
「え、ちょっと、それどういう・・・。」
私は激昂して、思わず席を立ち上がった。
「嘘だけど。」
こんなやり取りを1時間半ほど行っていた。
帽子屋さんは結構気さくで、お話していると楽しかった。
この世界は、「女王」と呼ばれる人物に統治されていること。
この世界の建物は、全部お菓子な魔女がお菓子の手先を使って建てているということ。
王女の王宮には、この世のものとは思えぬお菓子があるということ。
白うさぎは、今日お茶会に来る予定だったが、おそらく王宮にいるということ。
「そろそろ、いこうと思います。」
「そう、白うさぎを追いかけるんだっけ。がんばってね。」
「紅茶、とてもおいしかったです。またお願いします。」
「はいはいー。」
こうして、私は、お茶会を後にした。
目指すは、この世のものとは思えぬお菓子があるという、女王の王宮へ。
つづく