「いそがなくっちゃいそがなくっちゃ」
お菓子な魔女に白ウサギに変えられた「少年」は、
魔女の家で、ため息をつき、呟いた。
食べてもおいしくない。という理由で、お菓子な魔女から、
働くことを前提にこのお菓子な世界で暮らしている。
お菓子な家に寄って、城に向かったら、結局遅刻して、
女王様にこっぴどくしかられ、
魔女に手紙を届けようと、お菓子な家に戻ってきた時には、
魔女はいなく、魔法のステッキもなかった。
あれがなくなると、また女王様にしかられる。
今度は、白ウサギじゃなく、ハトサブレにされてしまうのではないかと思う。
もともと、白うさぎの役目に王女から任命された人材は、
100人くらいいた。しかし、
女王が気に入らないうさぎをハトサブレに変えていくものだから、
今では、僕一人しかいない。
ハトサブレと、白うさぎのどちらが良いか。
そう聞かれると少し難しい。
ハトサブレは、飛んだり出来るけど、
白うさぎは、走り回らなきゃいけない。結構疲れる。
女王から人参をくれるから働けと言われると、
なぜか逆らえない。
誰かにかまってもらえないと、なにか寂しい気持ちになる。
しかし、ハトサブレになった時に、まあ、魔女の手下として、
建設現場で働くなら別にいい。
ちょっと大変そうだけど、意外と魔女は優しそうだし。
でも、女王の側近に配属されたら最悪だ。
「首をはねておしまい!」といつ言われるか。
怯える日々を過ごすのだ。
最近では、側近のハトサブレが女王に首を折られすぎて、
魔女の手下のハトサブレが駆り出されているらしい。
そう考えると、やはり白うさぎのままでいた方が、
いいに違いない。そう思う。
と、そこまで考えて、やはり魔女と、持っていた杖を
回収しなければならない。
魔女の家の中を見渡す。いつも通り、ハトサブレが働いている。
机の上を見る。図面が置かれており、
いつもの魔女の作業場所と同じだ。
しかし、一つ違いがあった。
テーブルの上に、白いお皿と、ティーカップ。
おかしい。
魔女は、甘いものが嫌いなはずだ。
どう考えても、誰かがケーキを食べたように見える。
あと、紅茶も。
つまり、こうは考えられないか。
誰かが、魔女の杖を奪い、お菓子の魔法で、
魔女をお菓子に変えて、食べてしまったのだ。
なんというひどいことを。
そうなると、まさか、侵略。
このお菓子の世界を食い尽くして滅ぼそうとする
悪の化身が、この世界にやってきたのではないか。
まさか、この悪の化身は、お城に向かい、
女王に危害を加えようとしているのではないか。
この件は、手紙として、書き留めておく。
願わくば、もし僕がお菓子に変えられて食べられてしまったら、
代わりに仇を討ってほしい。といっても、このお菓子の国には、
あとは帽子屋しかいないのだけど。
・・・
後日。お城の入り口で、粉微塵になったハトサブレが発見された。
青い服の少女がお城に入城した日と、
偶然なのか、同日の出来事である。
その後、白うさぎの少年の姿を見たものは誰もいなかった。
つづく