home > 小説 > 3章「煉獄の王国魔女ナルシア」 > 3.10 海と神とリバイアサン
まず、海の航海がいかに難しいかを説明しなければならない。
海路は、リバイアサンと呼ばれる、水の魔術によって作り出された「怪物」が存在する。
海路を進むうえで、必ずこのモンスターと戦わなくてはいけないのだ。
さらに、手下となる大量のマーメイドたちが、船に忍び寄り、落としにくる。
そして、この怪物を倒したことのあるものは一人もいない。
それゆえに、この世界の大陸は3つに分断されており、国交もほとんどない。
なにより、この怪物は海上では「飛行」能力を持たなければ攻撃さえ当てられない。
つまり、こちらは攻撃手段を一切持たないのだ。ただやられるのを待つだけである。
「だから、私の魔導の竜を、戦乙女のメイス。あなたに貸すわ。」
輪廻の竜「ブレイズドラゴン」。魔力を食らいその力で火の中から蘇るという竜だ。
だが、ブレイズドラゴンの力では、せいぜい数分の飛行と力の具現化が良いところだ。
「おい、まずいぞ!マーメイド達が!このままじゃ船を落とされる!」
溢れんばかりのマーメイドが、船に侵入している。英雄レイスと私フリーディアでなんとか追い払おうとするが、
数があまりにも多すぎる。
「見ておきなさい、これが、煉獄の魔術の極意・・・。「サクリファイス・アルケミー」よ!」
魔女ナルシアは、魔法陣を空に刻む。魔法陣は炎によって燃える。
そして、現れる。炎の化身となった竜にまたがる、戦乙女メイスが。
「ノーブルライド・ワルキューレドラゴン!」
巨大な竜。おおよそリバイアサンの2倍以上は大きさがあると思われる竜。
それを操り、リバイアサンへの攻撃を戦乙女メイスは開始する。
「これほどの大きな竜・・・。いったいどこから魔力を?」
法術士の少女は疑問を呈する。
「魔力なら・・・生贄となるものがいる。」
燃えていく。マーメイド達が。その光景は、地獄以外の何物でもない。まさに、煉獄の魔術だった。
「煉獄の魔術の根幹は、生物を生贄にすること。その力をもって、ドラゴンを呼び出す。」
あっというまに、リバイアサンは消し炭にされていく。
こうして、私たちは魔王の城への侵入に成功したのだった。