home > 小説 > 3章「煉獄の王国魔女ナルシア」 > 3.8 魔王の城と水の魔女と月の夜
「ファイヤーボール!」
で、出来た!私は思わず感動した。
私は、魔女ナルシアから、簡単な火の魔法を教わっていた。ようやく練習すること1時間。基本攻撃魔法「ファイヤーボール」を会得する事が出来たのだ。
「・・・本当に使えるなんて。私でも5年はかかったのに。」
魔女ナルシアは驚いているようだった。照れる。
「勇者レイスの騎士王三連撃、訓練生メイスの剣技、そして私の煉獄の魔術。どれもそれなりのレベルで使えるようになっている。あなた本当に今まで剣も魔法も経験がないなんて。正直、信じられないわ。」
魔女ナルシアは、不思議そうな顔をしている。
「それなりのレベルどころじゃないわ。最近では、私に剣で勝つこともある。」
訓練生メイスとの剣の訓練は毎日やっている。最近は勝率は50%くらいだ。そして、勝率が上がるにつれて、訓練はどんどん厳しくなっていっている気がする。
「みんな、おしゃべりはやめだ!敵モンスターが現れたぞ!」
マーメイドが1体。この海岸地区ではよく現れるモンスターだ。しかし、侮ることは出来ない。
「みんな、下がりなさい。私が煉獄の魔術の見本を見せてあげるわ。」
これが、魔女ナルシアが戦う最初の姿。どのような戦いを見せるのか。
「我が魔力を喰らいて、現れよ輪廻の竜、ブレイズドラゴン!」
そこに現れたのは、ドラゴンだ。炎を纏い、召喚される。
「よく見ておきなさい。これが「召喚」よ。自分の魔力を使い、刻まれた魔法陣のモンスターを召喚する。」
「いけ、ブレイズドラゴン!バーストブレイズ!!」
マーメイドは、火だるまになり、焼き尽くされていく。全く慈悲のない、恐ろしい攻撃だ。
「これが私の力よ。今後の参考にしなさい。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夜。私はどうしても寝付けずにいた。なぜこの世界には魔物がいるのだろう。それが気になっていたのだ。
「ねえ、どうしてこの世界には魔物がいるの?」
私は、ふと魔女ナルシアに聞いてみた。彼女なら知っているような気がしたのだ。
「この世界の魔物は、かつて、水の魔女があらゆる怪物を作り出す邪悪な研究から生まれたものだと言われているわ。水の魔女は怪物を作り出す過程の中で、強力な再生能力を持つ存在、魔物を作り出したと言われている。そして、最終的に、水の魔女は作り出した魔物達によってその力を取り込まれ、「魔王」となったと言われているわ。今ではなぜそんな邪悪な研究をしていたのか、わからないみたいだけど。」
魔女ナルシアは、足を組みながら話し続ける。
「魔王の城と呼ばれる島が、私たちが目指す最終地点だけど、ここはかつて水の魔女が住んでいた場所だとされているわ。魔物達の巣窟になっていて、出てくるモンスターもレベルが違う。当然、厳しい戦いになるでしょうね。」
魔女ナルシアは、月を見上げ、話す。
「もしかしたら、誰も生きて帰って来れないかもしれない。・・・いや、ごめんね。ついつい弱気になって。もう寝ましょう。」
その横顔は、まるでろうそくの炎のように消え去りそうに見えた。